お土産にDVDを..、でも買う前にちょっと待った!


お土産にDVDを..、でも買う前にちょっと待った!

  夏休み、海外旅行をした際に、気に入った映画や番組のDVDやビデオカセットを買ってみようとする人は多いかもしれない。
「帰ってから、英語のヒアリングの勉強にもなるし、何と言っても安いしね。」と軽く考えて、大量のDVDを買い込んで来た人もいる。

  でも、それを自宅のDVDプレーヤーで再生しようとしたが、上手く行かない。一緒に買ってきたビデオテープも綺麗に写らない。こんな経験をした人は、実は少なくないのかもしれない。

  実は、私もその一人であった。アメリカのスーパーで買ってきた特売のDVDが、家のプレステでは再生できない。何々「リージョンコードが違います。」これは一体何であろう。実は、DVDには、DVDが販売される地域によって世界を6つに分けた「リージョンコード」と呼ばれるものが設定されている。日本のリージョンコードは「2」で、アメリカは「1」であるので、アメリカで買ってきたDVDは日本のDVDプレーヤーでは簡単には再生出来ない。

  何故、この様な使い辛い仕組みが採用されたのか。リージョンコードは、DVDの共通規格策定の際には遅くまで話題に成らなかったのだが、規格をまとめる直前に、アメリカのハリウッドが、アメリカで先に封切り、DVD化された映画を、他国でも上映して儲けを上げる際に、アメリカで先に発売されたDVDが輸入されて出回ってしまうと、興行収入に影響を及ぼす、と考えた事が大きな所以らしい。

  リージョンコードの一番目「1」は北米。つくづく、「アメリカ・アズ・ナンバーワン」的な発想だと思いつつも、いろいろ調べてみると、このリージョンコードを無効に、つまり、どんなDVDでも再生出来るプレーヤーについての説明や、手元のDVDプレーヤーのリージョンコード設定を無効にする方法等が書かれているページを多々見つけられる。規制する側、規制の逃げ道を探す側のいたちごっこは、どこの世でも同じ様な事らしい。

  日本と欧州は、リージョンコード「2」で、一見ヨーロッパで買ったDVDは日本で観られるような気がする。然し、ここには一つ落とし穴があり要注意だ。

  DVDでは無く、VHSのビデオテープを買ってきた場合、アメリカで買ったものは日本のVHSプレーヤーで上手く再生できるが、ヨーロッパで買ってきたものは観るに耐えない画像・音になってしまう。
  これは、NTSC方式・PAL方式と言った、映像信号の規格の種類が違う為に起こる事である。NTSC方式とPAL方式では、走査線数、画像のサイズ、一秒間表示する画像の枚数が全く違ってくるので、同じTV機器では上手く再生できないのだ。又、NTSC方式・PAL方式の他に、SECAMと呼ばれる方式もある。

放送規格の違い
  NTSC PAL/SECAM
走査線の数 525/60 625/50
ピクチャサイズ(ピクセル比) 720x486 720x576
フレームレート 30(29.97)fps 25fps

  NTSCとPALの違いに対処するためには、これらの両方の信号規格に対処したTV機器等が必要になる。もっとも、最近流行りのパソコンで観るDVDであれば、パソコンのディスプレイにNTSC・PALの規格が無いため、この違いは気にせず見ることが出来る。


  では、海外に旅行に行った際に、DVDを買うのは良くないのか、と言うと、必ずしもそうとは言えない。前出の方法でリージョンコードを無効にして楽しんでいる人も世の中にはいるし、リージョンコード「ALL」と記された、どのリージョンコードのプレーヤーでも再生可能な商品もある。(リージョンコードの表示例) この、リージョンコードが 「ALL」で、NTSC規格のものであれば日本に持って帰ってきても問題なく再生できる。各国の放送規格(NTSC/PAL/SECAM)を確かめるのは、ソニーのホームページの一コーナーが参考になる。

  香港などに行くと、驚く無かれ、街中売られているDVDは、殆どリージョンコード「ALL」の製品だ。アジアの交差点の一つのため、「NTSC」「PAL」どちらのソフトでも売られている。香港では、日本のトレンディドラマのVCD等、各国の番組・映画が溢れている。近年、著作権法が制定され、徐々に取り締まりも行われているというが、著作権法啓蒙のためのTV・CMでは、「映画館でビデオ撮影した映画の内容をコピーして売るのは法律違反です。」と聞く程で、日本や欧米の著作権の概念からはかけ離れたものがある。


  中国でも、日本メーカーのDVDプレーヤーが現地製のものと比べて殆ど売れていない、との話を聞いた事がある。日本メーカーのDVDプレーヤーは、エラー処理を厳密に行うので、現地で買った海賊版だと再生できないものが多くなってしまう。エラー処理が多少あいまいで、画質が落ちてしまったとしても、買ってきたソフトが「ちゃんと」再生できる機種の方が売れるのだ。


  元々欧米で発達した「著作権」の考え方は、第1次・2次産業が中心の途上国には不利でなじみにくいもの。しばしば先進国と途上国間の対立の種になる。それにしても、一国の一産業の利益を優先して「リージョンコード」なる国際規格が出来てしまうのは如何なものかなと思いつつ、出来てしまったものは仕方ない。海外に出かけてDVDをお土産に買うときは、リージョンコード「ALL」のものを、又、NTSC/PAL規格の違いにも注意して買う事にしよう。

 


映像担当 (感想等はこちらへ) 2002.07.24





Date:  2003/7/2
Section: 海外羅針盤
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