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海外羅針盤: W杯共催が日韓関係へ残したもの  
Author: ayumi
Published: 2002/7/7
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W杯共催が日韓関係へ残したもの

 日韓で初の大規模な共催国際イベントとなった2002年FIFA WORLD CUP。閉会式後の日韓首脳会談では、W杯共催の成功を祝う共同メッセージを発表、W杯の開催は大成功を収め、更には日韓関係の前進に向け大きなステップになったと報道されている。

 このW杯を開催していた一ヵ月間は、筆者にとって韓国に対する見方、更には日本のマスコミのあり方とインターネットの持つ情報伝達・世論形成力についても様々な事を考えさせられた。W杯の共催が我々に残したものはどの様なものだったのであろうか? この一ヵ月間に体験・見聞きした事を基に振り返ってみたい。

 W杯開催期間中、たまたま韓国・ソウルを訪問する機会があった。
 今回の出張は仕事の出張で行ったもので、W杯の試合を生で見る事は残念ながら無かったが、街中を歩くだけでW杯の熱気、盛り上がりを肌で感じる事が出来た。
 街中を歩くと、至るところにWORLD CUPの文字、開催国の国旗、サッカーボールの絵を目にする。公式スポンサーでなくとも、サッカーボールをモチーフにした看板を掲げ、W杯開催記念と書くのはもはや当たり前である。

 ソウルに入ったのは6月9日。翌日、10日は韓国−米国戦があったが、午後は会社勤めの人も皆観戦で盛り上がってしまうので、殆ど仕事にならなかった。かくいう私も、現地駐在所のスタッフとTVに見入っていたのだが。駐在所から歩いて5分程の所に市庁があり、途中で抜け出して見に行くと、土砂降りの雨の中、何万人もの市民が大型スクリーンを見ながら試合を応援していた。まだ予選でのひとコマであったが、韓国でのW杯に対しての国中での盛り上がりを肌で感じ取れた。
 現地で仕事の打合せをする際も、必ずW杯の事が話題になった。日本がロシアに勝った試合の直後で、私と接する韓国人は皆、日本チームへの賛辞を口にし、決勝戦で日韓が対戦できればとの冗談で盛り上がったものだ。
 一方で、日本とベルギーの試合の時、日本が点を取られた際に、学生達がかなり盛り上がっていたとの話も現地で聞かれた。最近でも「日本人」だからとタクシーの乗車拒否があったと言われる国である。反日感情を持った人がいるのは事実だし、ベルギーのサポーターもいるだろう。残念だけど仕方が無いと、その時はあまり気に留めなかった。

 6月13日に日本に戻って翌日、仕事に戻ると、会社では日本対ポーランド戦を観る場合は有給の申請を出すように(勿論、業務に支障の無い範囲で)、との通達が社内で流されていた。業務を休みにして全社で応援しているのが当たり前の韓国では、こんな通達は出せないなと、両国の国民性の違いを感じつつも、この時点では今回のW杯共催が日韓関係にとって悪い影響を残すものとは考えられなかった。

 日本が決勝トーナメント進出を決めた翌日、韓国はポルトガルに1-0で勝ち、決勝トーナメントに進出。4日前、ポーランドに4-0で快勝したポルトガルにとって痛手だったのは、ポルトガルの選手二人がレッドカードで退場になった事だ。レッドカード2枚は素人目にも多いなと思ったが、この時は「開催国は決勝トーナメントに行く」というW杯のジンクスは破られなかったのだなとのありきたりの感想であった。

しかし、その翌週、韓国のサッカーに対する世界の見方、強いては韓国そのものに対する見方も変化をみせる様になってしまった。

 一つ目は翌週火曜日のイタリア戦である。その前日、スタンドに「AGAIN 1966」の人文字が準備されていたのを知って、イタリアの記者、サッカー協会の怒りを買う事となった。

 しかし、イタリアに燻る火種を更に大きくしたのが、韓国よりの判定が多く出た事が一因となって、優勝候補の一つと呼ばれていたイタリアチームが韓国に敗れた事であった。
 この事にイタリア国民の多くが怒り、イタリア国営放送はFIFAに賠償請求を検討、FIFAには40万通の抗議の電子メールが寄せられたと報道されている。
誤審があっても、それに対してくじけない気迫が、イタリアにはなかったんだ。」 と、あるイタリア人は書いている。誤審の助けがあったとしても、ある程度の力が無くてはサッカーの真剣勝負で勝てない。好意的に見れば、時にはイタリアにも勝てるだけの力を韓国も(数年前、日本もオリンピックでブラジルに勝った事があったが)持てたのだとも言えよう。

しかし、このイタリア人の見方も、次のスペイン戦で一転する事となる。 その週の土曜日、韓国チームはスペインチームをPKの末に破って、順々決勝にコマを進めた。そして、この日の試合では、FIFA会長ですら、「明らかに誤審と言えるシーンが2度あった」とコメントする程で、韓国よりの判定に対する疑問は新華社電でも伝えられた程だ。(このため、中国では韓国の学生に対する非難も持ち上がり、韓国政府が中国に対して公式抗議文を出している。)

 私も、これらの試合には疑問を持たざるを得なかった。更に個人的なわだかまりを大きくしてしまったのが、誤審疑惑には殆ど触れず、韓国チームの事を賞賛し続ける日本のマスコミの報道内容であった。在日韓国人の学生ですら疑問・嫌気を書かざるを得ない程の状況の中で、一体どうなってしまっているのであろう。

 マスコミから流れるニュースだけでは納得が行かなかった私は、インターネット上でWORLD CUP関連の掲示板を探して読んでみた。そこで目にしたのは、山のような誤審批判のメッセージであり、立て続けの誤審の影には陰謀がありと、様々な方が書く興味深い分析、記述だった。

 この中には、韓国に対する感傷的な批判も多く書かれていたが、W杯の呼称問題以降、昨今の誤審騒動のために今回のW杯共催にわだかまりが強まっていた筆者にとって、多くは共感を覚えるものもあった。

 W杯の韓国関連の掲示板は、Yahooにあるものだけで数十以上のトピック(スレッド)があったが、その中には一日の投稿数が数千件を超えるものもあった。勿論、私の様に何も投稿しないで内容を読むだけの者もいるので、数万人以上の人がこれらの記事を読んでいた筈だ。これらの投稿を読む中で、韓国に対する見方が変わった人も少なく無いであろう。投稿の中には、私と同様に日本のマスコミ報道に嫌気が差し、ここ(掲示板)に来てはじめて共感する意見に出会えた、と描いている人も少なくなかった。

W杯開催中に見たソウル市内


↑対アメリカ戦を街頭で観戦する市民↓



市内のカフェにも立見の観戦客


デパートの中の看板もサッカーボール


参加国の国旗とボールは至るところに

 翌週、火曜日、韓国対ドイツ戦の際に、国立競技場で韓国チームを応援するPublic Viewingが企画された。

 この事は、ネット上の掲示板でも話題となった。そして、主催者も予想できなかった事が起きた。1000人程の人が、「FAIR JUDGE(公正な審判を)」と書かれたプラカードを掲げ、対戦相手のドイツを応援するために国立競技場に集まったのである。国立競技場に集まったドイツのサポーターの多くは、ネットの掲示板への投稿を読んで集まったと言われる。現在のインターネットが持つ草の根的な世論形成力を垣間見た一瞬であった。

 その日、韓国はドイツに負けたが、韓国で行われる3位決定戦にコマを「進める」ためにはこの日の試合は負けるはず、と書かれた投稿等もあり、掲示板への書き込みは相変わらず減らなかった。一方で、韓国のマスコミが国立でのドイツ応援を批判した、と報じられると、ネット上での嫌韓議論は更に盛り上がった。韓国チームにまつわる報道、疑惑を取り上げるホームページは100万件以上のアクセスを集めるに至った。

 ドイツ戦に負けた翌々日、TBSのラジオ番組、「バトルトーク」のホームページで一つのアンケートが行われた。
「あなたの中で日本と韓国の”距離感”は縮まったと思いますか?」との問に対する結果は、思うが25名、思わないが229名と圧倒的に「思わない」とする議論が多かったのである。

 寄せられた意見の中には、これまで韓国に対して良い印象を持っていたが、大会を通じて韓国に対する見方が悪くなった、と書く人も多くみられた。そして、日本のマスコミの韓国寄りの報道が、更に日に油を注いだ、とする人も多かったのだ。国民の気持ち・民意を汲み取ることが出来ないマスコミのあり方は、国民の信頼を得る事が出来なくなってしまう。又、かえって人々の正直な気持ちに対してマイナスに働いてしまうということを、このアンケートの結果は端的に示していると言えよう。

 翌々日、フジTVのホームページで行われた、W杯日韓共催は成功だったか、とする問には、「そうでない」と答えた人が98%・2万6千人以上にもなった。この事も、今回のW杯が日本人の韓国に対する印象悪化を端的に見ることが出来るものではないだろうか。

 インターネットは、その匿名性の所以でもあるが、各個人の心からの声が露になるところである。日本のネット上では、韓国に対する様々な書き込みがなされているが、韓国の掲示板で日本に対する書き込みも、反日感情が露になっている書き込みを多く見かける。これらをみると、日本のマスコミが誤審問題その他を騒ぎ立てたら、とても日韓「競催」どころの騒ぎではなかったかもしれない。

 一方、7月5日、朝日新聞は世論調査で、日韓関係は今後「よい方向に」が8割、今回のW杯を「良かった」とする人が87%に達したと報じた。W杯が「失敗だった」とするアンケート結果はホームページ上で行われていたものなので、両者の差はインターネット外のメディアに多く接していた人と、インターネット上の草の根的な情報に接していた人の差とも取れる。インターネット上の情報に接した人が少なく、韓国に対して悪い印象を持った人が極一部であるのであれば、今回のW杯は成功だったと言えるのかも知れない。

 しかし、W杯を通じて韓国との距離は本当に狭まったのだろうか? ネット上での数々の議論を垣間見た筆者は残念ながら、W杯を通じてより大きな溝と違和感を感じざるを得なかった。そして、この事はインターネット上で様々な情報に触れる機会の多い、日本の多くの若い世代が同様に感じた事なのである。

 しかし、それでいて両国の間に出来た新たな溝を深めたままにしていては、これまで日韓友好のために奔走してきた両国の人々の努力を踏みにじる事になってしまう。筆者個人の見識でも、現在の韓国には、アジア通貨危機後の社会における成果主義の普及・徹底、高いブロードバンド普及率とネットの活用・プレゼンスの高さ、ベンチャー企業のソフト開発力等、韓国が既に日本より先行してしまっている分野、学ぶべき分野は多々あると考える。

 また、一部ではあるが、韓国内にも、今回のW杯の出来事を省みて、今後の日韓関係のあり方を良い方向に見直すべき、との声も出ている。

 お互いの持つ違和感や主張を、もっと公の場でぶつけて議論して行かなければ、人々の嫌悪感・違和感が燻り増長して、健全な関係発展にはならないのではないだろうか。言うが易し、行うが難しかもしれないが、今後の関係発展のための双方の建設的な議論の必要性を痛感する今日この頃である。

 同時に、今回の出来事は、既存のメディアのあり方とインターネットが社会に及ぼす影響について、深く考えされられたものであった。


草場 歩 - 2002.07.07

 
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